空き家&片田舎暮らしから日本を考える~越冬

早いもので来月には、ここに暮らし始めて1年となる。四季を通じて住んでみるというのは重要だ。私一人の手には負えない、広すぎる空き家暮らしでは、いつ・何が・どんな風に・どんなピークで起こるのかを先読みして、先手を打つことが必要になる。延々と続く雑草取り、何度も家屋侵入するスズメバチの対策など、昨年は訳が分からず後手後手だったが、今年は昨年の教訓を生かして、早目の対策をとりたいと思う。

 

さて、私の住んでいる場所は、都内とはだいぶ気温差があるものの、寒冷地とまでは言えないため、家の防寒対策というのがほとんどなされていない。この家を所有する大家さんは、ここで長期間暮らしたことはなく、とくに真冬は全く使ったことがないそうだ。中途半端な寒さの地で、夏仕様の古い日本家屋での「越冬」がどのようなものか、大家さんにも私にも未知の世界だった。

 

私は昆虫類は好きではなく、むしろ「苦手」な方である。ましてや、毒を持つムカデや攻撃をするスズメバチなどと共存するのは、絶対無理だと信じている。しかし、自然に囲まれて暮らすということは、そうした虫や爬虫類とともに暮らすということである。目の前の田んぼの脇には「マムシに注意」の看板が立ち、オオスズメバチが網戸にぶつかる・・・生きものが最も活発になる夏は、それがここでの「日常」なのだ。

 

昔から、森の隠れ家のようなレストランが大好きで、そういった場所によく出かけていた。しかし、見た目の綺麗さと雰囲気だけに酔いしれ、自然とともに暮らすための知識や知恵は全く持ち合わせていなかった。今から思えば恐ろしいが、真夏に森や山へ全身黒づくめのファッションで出かけてもいた。「ハチの習性=(熊だと思って?)黒いものを攻撃する」とも知らず。。。これまで刺されたことがないのは、単に運が良かっただけなのかもしれない。

 

活発だったスズメバチも、11月半ば頃にはほとんど姿を見なくなり、12月になると、あれだけたくさんいた大小さまざまのあらゆる虫を、全く見かけなくなった。腰のあたりまで伸びてしまった雑草類は枯れ果て、庭の見通しが随分良くなった。もちろん、日を追うごとに気温は下がっていったが、虫に悩まされることから解放されて、逆に快適だとさえ思えた。

 

しかに、さすがに12月下旬にもなると、朝晩の寒さがかなり厳しくなってきた。古い木枠の玄関からは、常に隙間風が吹き込み、仕切りの無いがらんとした部屋は、エアコンを稼働してもほとんど効果がない。朝7時ごろに起きて、室内の温度計を見ると、マイナス2度!! 室内にも関わらずマイナスの気温とは、酔っぱらって部屋の中で横になったら、「凍死」してしまうではないか。宴会時の酔客には要注意だ。

 

 

部屋の中がマイナスでは、布団の中ももちろん寒い。が、こちらは大きな湯たんぽを導入してから、快適になった。寝る数時間前に湯たんぽを準備し、布団の中に入れ、1時間おきぐらいに湯たんぽの位置を変える。そうすると、寝るころには布団がポカポカで、朝まで暖かだ。ちなみに、冬に私の家に泊まりに来る人たちは、皆、朝になると頭まですっぽり布団の中に入っている。布団から顔を出していると寒いから無意識にそうなるのだろうが、その光景を見ると思わず笑ってしまう。

 

1月に、本当に寒い凍えるような日があった。水道の蛇口をひねっても、水が出ない。私は「凍結」を経験したことがなかったので、しばらく(1時間ぐらい)、水が出ない理由を思いつかなかった。しかし、いつまでたっても水が出てこないので、ずいぶん経ってから(もしや・・・?)と、凍結の可能性を思った。

 

私はこれまで、田舎暮らしの経験も、自分で家を維持した経験もないので、何かが起こって初めて問題を認識し、対処法をネットで調べる・・・という学習パターンで田舎暮らしをしている。なので、「ものすごく詳しい」分野もあれば、「全く知らない」分野もある。つまり、知識と経験が「平均的」ではなく、「自然に醸成されたもの」でもないのだ。普通なら、「このことを知っている人なら、当然こちらも知っている」といったような常識は、すっかり大人になってから田舎暮らしデビューをした私には、当てはめるのが難しい。

 

さて、凍結対策をしていない「夏仕様」の私の家は、水道管が凍結してしまった。ネットで調べると、凍結したからと言って熱湯をかけたり、急にお湯を出そうとすると、急激な温度変化で今度は水道管が破裂する、と書いてあった。水が出ないのはとても不便だが、ゆっくり自然に解凍されるのを待つしかないようだ。

 

水道の蛇口を開けたままにしておいたら、3時間ぐらいたってやっと、ほそ~く水が流れ始め、やがて元通りになった。後で聞いたところによると、その日の朝の外気温は、マイナス8度だったそうだ!

 

凍結が解消されてよかったと一安心していたら、その後の水道料金の請求が普段の4倍ぐらいの金額で、びっくりして大家さんに連絡をした。水道管は凍結では収まらず、どこかで破裂したに違いない。大家さんが家の様子を見に来て、地元の水道業者に電話をかけていた。この寒さで水道管が破裂した家があちこちであるそうで、小さな町の水道業者はパンクし、ずいぶん待たなければならないそうだ。やはり、寒冷地とまでいかなくとも、寒さ対策は必要である。

 

このブログを書いている現在は4月。今から思うと、真冬の本当に厳しい寒さは12月下旬から3月初旬までだったと思う。虫が全くいない時期は12月半ばから1月半ばまで。それ以降は、まだまだ寒い時期が続くのに、虫たちはか弱いながらも現れ始め、細々と活動を始めるのだ。それはまるで、真冬の寒い時期につぼみをふくらませ始める、梅の花のように。

 

無事、越冬できたことに感謝する春である。