【映像ワークショップ報告】「その後」への関心、「その後」が肝心?!

5月から2か月半にわたって開講した、立川シビルの映像ワークショップは、8月30日に完成披露上映会をし、予定していたすべての日程を終えることが出来ました。

 

シビルでの映像ワークショップは、今回が2回目でした。前回(2015年)は、課題作品の取材対象はシビル内の講座に限定し、ロシア民謡、ボイストレーニング、中国の楽器・二胡(にこ)などのレッスンを取材し、約3分間の作品を完成してもらいました。

 

課題作品の取材対象をあらかじめ限定したのは、「対象自由」としてしまうと、限られた期間内では到底完成できないような壮大なテーマの企画書を書いてしまったり(まるでNHKスペシャル?みたいな^^;)、思ったように取材の許可が下りずに時間切れになって未完成・・・ということが、以前、他の場所で開催した映像ワークショップで起こったからでした。

 

シビル内講座の先生方ならば、すでにシビルスタッフとは関係性があり、取材を受けてくれる可能性が高いです。そして、レッスン風景の撮影というのは、バリエーションが限られているので、構成もおのずと絞られてきて、初心者が取り組むのに最適です。そのような理由から、前回のワークショップでは、取材先をシビル内講座に限定しました。

 

しかし、今回はちょっと欲を出して、シビル外にも取材対象を広げてみようということになりました。候補として挙がったのが、シビルともつながりがある、立川周辺で生活困窮者の支援を行う「さんきゅうハウス」でした。彼らが立川駅周辺で行っている「夜回り」に私も参加し、どんな活動をされているのか、撮影取材は出来そうかなど検討しました。「さんきゅうハウス」のスタッフの方々が取材を快諾してくださったので、課題作品のテーマにすることになりました。

 

・・・快諾してくれたとはいえ、いきなりハードルの高い取材先です。歌や踊り、楽器の練習ならば、映されてもそう困る人はいません。しかし、何らかの事情を抱えて路上や河川敷で暮らす人、生活保護を受けながらさんきゅうハウスに通う人に、短期間で、信頼関係もなく、いきなりカメラを向けるのは難しいです。それは他人の家に土足で上がり込むようなもの。

 

ワークショップでは、課題作品の取材に出かけるまでに、「撮影1(基礎)」と「撮影2(応用・トラブル)」を必ず終えるようにしました。「基礎」の方は、カメラや三脚の扱い方、様々な撮影のバリエーションなど、技術的なことが主です。「応用・トラブル」の方は、カメラには全く触らず、「他人を撮る」というのはどういうことなのか、どこに立ちどこにカメラを向けるのか、どこまで踏み込んでいいのか・・・などなど、明確な答えのない問いをディスカッション形式で行いました。

 

このテーマのディスカッションの際に、私が必ず見せる映像があります。それは、『さようならUR』制作時の、映画本編には未使用の映像です。普段、私は「被写体の人が第一」と言っておきながら、極限の状況になると、自分が撮りたいものを撮らんがために、被写体の人にUR職員をおびき寄せる「共犯者」になるよう強要するという、仰天のやりとりがすべて記録されていたという映像です。これを見せると、大抵、受講者の方々は(こんな強引に撮っていいのか?)とざわつくのですが(笑)、私は「ドキュメンタリーとは何か?」を考える格好の教材として、その映像を見せています。(私の行いが「お手本」というのでは全くなく、むしろ「反面教師」としてなんですが^^;)

 

とりあえずは映像について最低限のことは座学で学び、課題作品の取材に関し「絶対に無理(&無理強い)をしない」ことを強調して、あとは受講者の皆さんの個性とこれまでの人生経験に任せて、「さんきゅうハウス」を含む、課題作品の取材が行われました。

 

講座の風景(座学)

 

 

 

講座の風景(実技)

 

 

課題作品の取材(さんきゅうハウス)

 

 

 

課題作品の取材(シビル)

 

 

 

課題作品の取材を終え、編集作業に取り掛かります。作品完成のための編集作業は2回しか確保していないので、期間内に完成させるのは結構大変!

 

 

 

 

 

編集の進め方は様々で、一緒に映像を見ながら、どの映像を使うか話し合いながら進めるグループもあれば、各自、自分が取材したパートの編集をしてきて、それを最後に1本にまとめるという方式で進めたグループもありました。

 

講座で撮影した写真をスライドショーにしたものはこちら。

 

 

 

全てのグループの作品が完成し、完成披露上映会へ! この日は、撮影でお世話になったさんきゅうハウスやシビル理事の方々も上映会にいらしてくださいました。

 

 

この日は、課題作品のほかに個人の作品も募集しました。自宅付近の夕焼けの様子を撮影し、その映像に打ち込みで音楽を入れ、上映会当日は、その映像と音楽をバックに、サックスを演奏するという方も! このような上映のされ方は初めてでしたが、とても贅沢なライブ演奏でした(^^)!

 

 

無事、完成披露上映会を終えて、ほっとしました。上映会後の交流会で、「中級講座の予定はないのか?」という質問を何人かから頂きました。私としては、この3分間映像のワークショップで、映像制作を始めるのに必要な技術と知識は、最低限身につけることができたと思っています。まずは、頭だけで理解したそれらの知識をもとに、今後はどんどん映像を作っていく(=実践する)ことが大事であると思います。それによって「自分のスタイル」を確立していくことを目指してほしいです。

 

ベトナムのインディペンデント映像制作集団・DOCLABのグエン・チン・ティさんも言っていましたが、自主制作をする人は、「セルフ・ラーナー」でなければならないと、私も思います。自分で課題を見つけ、その解決法を探し、学び続けていく・・・ということが出来る人のことです。映像を学校で勉強したところで、そこで得られる知識は、ほんの少しでしかありません。どんな作品を撮るか、どんな被写体と関わるか、製作途中でどんなハプニングが起きるか・・・それは作品によって全く違うので、習ったことをそのまま当てはめることができるケースの方が稀です。ですから、より多くの知識を得ることよりも、自分で考える力を養っていくのが大事ではないかと思います。

 

そんなわけで、私としては基礎講座を受講してくださった方々には、まず、「今後も映像を作り続けること」を目標に頑張ってほしいです(^^)!

 

ところで、これまでは講座が終わると、基本的にはそこでおしまいでしたが、今、興味があるのは「その後」です。これまでの経験上、ワークショップ後も映像を作り続ける人は、大体1~2割の人ではないかと思っています。どんな習い事も、それぐらいの定着率なのかもしれませんが、もったいないなぁ・・・とも思っていました。講座終了後も、モチベーションを維持する工夫はないか?と考えています。習得した映像の知識もそうですが、クラスメイト(?)とのつながりも、その場限りではもったいないですよね?(特に、シビルの受講者の方々は個性的な方が多いですし^^)

 

とはいえ結局は本人次第なので、私の方で出来ることは限られています。でも今回は、とても積極的な受講者の方が多く、今後がとても楽しみなのです!

 

例えば、「住宅問題のシンポジウムやイベントを撮影して、YouTubeにアップしたい」という目標を持って受講された方は、すでにYouTubeのアカウントを取得し、シンポジウムの動画を紹介されています。「住まいの貧困に取り組むネットワーク」のアカウントはこちら。すでに10本の動画が公開されています!

 

そのうちの1本はこちら。シンポジウムの登壇者をスライドショー形式で紹介しています。

 

 

「NPOの活動紹介ビデオを作りたい。以前作ったが、もっと上手になりたい」という動機で受講された方は、その後、活動紹介第二弾の動画を公開されました。

 

 

また、受講者有志のFacebookグループも作られました。グループには、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」がタグ付けされています! 今後、シビル講座出身者の作品が、山形で上映される機会があるかもしれません・・・!!

 

 

映像ではないですが、得意な料理を生かし、シビルで自主講座を開催する方もいます! 「陰陽調和(いんようちょうわ)」という調理法で、食材の陰と陽を生かして調理することで、素材がとても美味しく味わえるのだそうです。とても面白そう!!

 

10月4日(水)18:30~20:00 会場:シビル3F
参加費:1,000円(要予約、先着7名)
申し込み:荻原春代さん(080-3411-3982)

 

チラシ(表面)

 

 

チラシ(裏面)

 

 

ご興味のある方は、申し込んでみてください(^^)/

 

映像ワークショップを受講された方々の今後に注目したいと思います! 私も少し関わりながら(^^)

 

なお、講座運営に関し、シビル、丸山さん、高梨さんには大変お世話になりました。どうもありがとうございました!