【雑木林コラム】えっ!私に督促状?!-データ&作品の「保存」について考える

先月末、なぜか国立国会図書館から手紙が届きました。私は、国会図書館を調べもので利用したことはありますが、本を借りたことはありません。(何の書面だろう?)と思いながら、開封しました。

 

差出人は、「国立国会図書館 収集第一課」。ますます謎…

 

 

中を開くと、「出版物納入のお願い」という書面が入っていました。

 

 

なんと、『木田さんと原発、そして日本』のDVDを、国会図書館に納入してほしいというお願いでした!

 

 

 

へぇぇ~。こんなお知らせ、初めて受け取りました。一体、どこで私の映画のことを知ったんでしょう?!(こんな風に驚く私もなんだか…という感じですが^^;)

 

これまで様々な人が、「ISBNがついている本だけ、国会図書館に所蔵される」と言っているのを聞いたことがありました。「ISBNがついている」とは、要は、一般の流通に乗っている本ということですから、自主出版で、自分のホームページでだけ販売・頒布しているような本やDVDは、国会図書館の収集・所蔵対象ではない…という意味で言われていて、私もなんとなく(そういうもの)と思っていました。

 

私のDVDは、一般の流通には乗せておらず、自分のホームページで販売するほかは、インディペンデントの作品を多く販売するビデオアクトビデオ工房AKAMEに販売を委託しているだけです。(ビデオアクトとAKAMEのホームページは、沢山の興味深い自主制作作品が掲載されていますので、ぜひホームページをご覧ください♪)

 

これは野菜に例えたら、農協や卸売市場を通さず、消費者と直接つながる「産直」みたいな感じです(^^)。ですから、これまで国会図書館に納入をするという発想はありませんでした。

 

今回、納入の書面を頂いたので、その記入方法を質問するために電話で問い合わせをしました。私の活動やこれまでの作品、DVDの販売枚数などを聞かれたので答えると、木田さん以外の作品もすべて送るように、と言われました。

 

それはもちろん良いのですが、びっくりしたのが、「そちらさまの督促IDをお願いします」と言われたこと。

 

 

え、私って、「督促ID」なんて名称で管理されてるの???

 

これじゃあまるで、お金や本を借りたまま返さない人のようではないですか!

 

「納入のお願い」という書面を送っておきながら、顧客・取引先に対して「督促」客呼ばわりで管理するとは、さすが「お上」の発想(^^;)!

 

とりあえず書面に記入し、木田さん以外の全作品もそろえて、郵便局から発送しました。各作品2枚ずつで、1枚は「納本」用(東京本館で保存)、もう1枚は「寄贈」とすると、関西館で所蔵されることになるそうです。

 

 

今日の午前中は、この作業だけで終わってしまいましたが、無事発送できてよかったです。

 

ところで、国会図書館から送られてきた手紙には、納入の流れについて説明するリーフレットも同封されていました。

 

「納本された出版物のその後(整理・保存・利用)」、確かに気になりますねぇ。

 

 

「いつまで保存されるのか?」という問いに対して…

 

 

答えには、「期限はありません。保管に適した環境の書庫で、可能な限り永く保存し、利用に供します。」と書いてありました。おぉ! 頼もしい!(まぁ、文化財の保護という、ある種の「金儲けにならない」行為に、政府が今後、どれだけの予算を割いていくのかにも左右されるかもしれませんが…^^;)

 

リーフレットには、実際の保管環境についても紹介されていました。

 

 

「資料の保存に適した環境を保つため、書庫内は人の出入りを制限し、温度22℃・湿度55%前後を目安に管理しています」…このくだりに私は注目しました。

 

書籍のような「紙」と、DVDやブルーレイといった「ディスク」では、また条件が異なるかもしれませんが、「人の出入りしない(開閉しない)環境で、温度22℃・湿度55%前後」というのは、国が考える、現在で最も優れた保存環境なのだろうと思ったのです。

 

私は現在、『革命前夜』の編集作業で手一杯ですが、数年前から考えていることのひとつが、これまで撮りためた撮影素材の「保存」と「アーカイブ化」です。

 

私が初めてビデオカメラを購入したのは2007年で、当時の記録メディアの主流は、MiniDVというテープ式でした。やっとハードディスク記録型が出始めたころで、私はハードディスク記録型(HDではなく、SD画質)を購入しましたが、イギリスに行って数か月で壊れてしまい、以降は、知人から譲り受けたMiniDV型(SD画質)のビデオカメラで、『ブライアンと仲間たち』の全編を撮影しました。

 

その後、MiniDV型(HDV画質)のビデオカメラに買い替え、『さようならUR』(2011年)~『踊る善福寺』(2013年)までは、そのMiniDVカメラで撮影をしました。

 

2015年に現在のビデオカメラに買い替え(それはハードディスク記録型・フルHD画質)、『FOUR YEARS ON(あれから4年)』(2015年)、『インド日記』(2016年)、そして現在編集中の『革命前夜』は、すべてこのカメラで撮影したものです。

 

現在のビデオカメラで記録した撮影素材は、全てブルーレイディスクとハードディスクに保存してあるのでまだ良いのですが、過去にMiniDVテープで記録した膨大な撮影素材は、バックアップを取っていない状態なのです。

 

MiniDVテープで撮影した映像の編集は、映像のパソコンへの取り込みに、撮影に要した時間と同じだけの時間がかかるので(つまり、1時間の映像をパソコンに取り込むには、テープを1時間再生するため、取り込みにも1時間かかってしまう)、本編で使いたいシーンだけを取り込むようにしていました。

 

なので、撮影した全素材のうち、数パーセントしか取り込みをしていないのです。

 

映画本編で使われる素材というのは、全体から見れば米粒程度でしかないので、泣く泣く入れるのをあきらめた貴重なインタビューなどは、改めてまとめて証言集とするなど、アーカイブ化し、資料としていろんな人に観てもらえるようにしたいと考えています。

 

MiniDVテープは、名前の通り「テープ」で、カセットテープと同じような素材です。時間の経過や保存状態によって劣化しますし、再生して取り込むための機器は、現在は製造されておらず、中古品しか出回っていません。(また、最近のパソコンには、MiniDVテープの取り込みに必要な「IEEE1394」というポートも、標準装備はされていません。)

 

テープが劣化し、再生機器も手に入らないと、せっかく撮った映像は、もう見ることが出来ないのです!!!

 

これは本当に深刻な問題ですが、何しろ時間がかかる行為なので、取り組むにはそれなりの覚悟と準備が必要です。

 

私はこれまで、何だかんだのばしのばしにしてきてしまいましたが、『革命前夜』の編集作業が終わったら、上映活動と並行して、これまでの撮影素材の保存とアーカイブ化を、最優先で行おうと考えています。

 

でも、私の保存環境は、「人の出入りしない(開閉しない)環境で、温度22℃・湿度55%前後」とは程遠いので、将来、いざ取り掛かろうとするときに、すでにテープが劣化していたという最悪の事態も起こり得ますが…(> <)

 

ドキュメンタリー制作において、軽視できない「撮影素材の保存・アーカイブ化」問題、他の制作者(特に個人で制作するインディペンデントの人たち)がどのように考え、工夫しているのか、知りたいところです。

 

早く取り掛かるに、こしたことはないのですけれど!

 

以上、素材&作品の保存についてでした。