【制作日誌】基本はオート、でも! (2018.05.19 革命前夜 – 動画あり♪)

「映像制作を始めてみたい」という人から、時々、ビデオカメラの購入相談を受けることがあります。

 

カメラは、そりゃ大昔に比べたら手ごろな値段で買えるものになったとはいえ、簡易なものでも数万円、それなりのものなら10万円以上する買いものですので、事前によく検討して自分に見合ったものが欲しいと思うのは、ごく自然なことです。

 

人によって判断基準は様々かもしれませんが、私の場合は、「一人体制で使いやすいかどうか」というのは、大きなポイントです。

 

このブログを読んでくださっている方々は、私が、基本的には撮影も編集も一人で行っているということは、すでにご存じかと思います。

 

カメラのような商品は、それこそ上を見たらキリがありません。高額なものほど様々な機能が付加され、高性能になります。そして高性能になればなるほど、一般的にはサイズも大きく、重量も重くなります。

 

知り合いのインディペンデント系のドキュメンタリー監督の多くは(統計を取ったわけではないので、知っている範囲でしかありませんが)、20万円台ぐらいの業務用ビデオカメラか、もしくは本体価格15万円以上の一眼レフカメラを使っている人が多いような気がします。

 

業務用ビデオカメラは、なにより、キャノン端子などのマイクケーブルをつなぐことが出来る(=きちんと音が録れる)という強みがありますし、一眼レフカメラならば、背景をぼかしたポートレート写真のような美しい映像が撮れると人気ですよね。

 

私も、これまでに何度かビデオカメラを買い替えていますが、その際、業務機や一眼レフの購入も検討してきました。でも結局は、「民生用ビデオカメラの最上位機種」で落ち着きます。

 

その理由は、予算的なことももちろんありますが、業務機は「大きい」(荷物が増える)、「重い」(長時間の撮影やデモなどでは、持ち運びだけで体力が消耗する)、「存在感がありすぎる」(被写体への圧迫感があり、カメラを意識されてしまう)ということと、一眼レフは「レンズが重い」、「レンズが高い」(本体と別売りなので、セットで揃えると最終的にはかなり高額になります)、(そもそも写真機からスタートしているので)「長時間の動画撮影で本体が熱くなる」…などの理由が挙げられます。

 

それらに加え、「一人体制」の私にとっては、業務機や一眼レフは、「オート撮影に向いていない」ということが、選ばない最大の理由です。

 

自分好みの、こだわりの映像が撮れる…ということは、要は、自分のこだわりに合わせて、マニュアルで撮影の設定をするということです。

 

一眼レフが得意な、背景をぼかした美しい映像は、被写体にピントを合わせているから背景をぼかすことができます。最近は、一眼レフの人気が出てきたので、ピントを自動で合わせる能力はだいぶ向上してきたと言えますが、それでもまだ、基本的にはマニュアル設定を前提にしていますし、被写体が動き続ける動画撮影では、ピントが外れてしまうことも多いです。

 

背景をぼかし、肖像画のように印象的なインタビュー映像を…と思っても、肝心なピントが外れてしまったら台無しですよね?!?!

 

一人でインタビューをしながら撮影をする場合、被写体の人との会話に集中する必要がありますので、ビデオカメラのビューファインダーをじっと見続けるわけにはいきません。また、移動する被写体を追う場合、屋外からいきなり屋内に入る(光源が太陽光から蛍光灯に変わる)と、マニュアル撮影では映像の色合いがおかしくなってしまいます。

 

そんなわけで、一人体制では、こだわりのマニュアル設定が充実しているよりも、「オート」(自動調節)機能が強い方が、よっぽどありがたいのです。もちろん、最低限画質にはこだわりたいですが、カメラ自身が環境の変化を察知し、自分で最適な設定に切り替えてくれる、心強い相棒でいてくれた方が、私は撮影に集中することが出来ます。

 

以上の理由から、私自身はオート機能が強い民生用のビデオカメラを愛用し、普段も「オート」の設定で撮影をしています。そして、私に機材の購入相談をされる方々(大抵は一人体制)にも、同様に勧めています。(あ、一応、一眼レフカメラも持っていますが、ほとんど持ち歩きません。一眼レフを理解・研究するために持っている、みたいな感じ^^;)

 

あと、「オート」以外に重視しているのは、「暗いところ」での撮影に強いカメラであることです。

 

映像制作の場合、夜間や暗がりでの撮影も沢山あります。暗い場所でも良く撮れるカメラじゃないと、せっかく撮っても真っ暗でよく見えません。

 

かといって、防犯カメラに搭載されているような赤外線のカメラ機能では、全体が緑がかった気持ち悪い映像になってしまいます。

 

なので、不自然な色合いではないまま、暗い中でも良く撮れる…というタイプのカメラが良いのです。

 

…ですが、暗さに強いカメラの場合、大抵、実際よりもだいぶ明るく自動補正してしまいます。例えば、肉眼では「夕暮れ」(陽の沈みかけ)ぐらいの暗さの場合、まだ「夕方4時くらい」の明るさに補正するようなイメージです。

 

インタビューの場合は、夕暮れ時の光の美しさよりも、顔の明るさ(表情のわかりやすさ)が優先された方が良いので、自動補正で明るくなるのは構わないですが、「夕暮れ」としての美しさ、陽が沈む直前のピンク&紫がかった、ほんのわずかな一瞬の空の色…などを表現したいという場合は、マニュアルの撮影に切り替えることが必要です。(民生用カメラでも、中位機種以上なら、マニュアル撮影もそれなりに設定できます)。

 

『革命前夜』の撮影期間中、りべるたん近くの都電荒川線「向原駅」を通りかかったとき、ちょうど、陽が沈む直前の綺麗な紫色の空が広がっていたので、思わずビデオカメラを取り出し、急いで撮影を始めました。このとき、私の、暗がりに強いカメラでは、この絶妙な色合いが撮れないので、マニュアルで設定して撮影しました。

 

高層マンションが立ち並ぶ都会の街並みを、昔懐かしい路面電車がゴトゴト走る。紫がかった空に、だんだんと街の明かりが灯っていく。家路を急ぐ人たちが自転車を走らせる…

 

私は現在田舎に住んでいますが、この「紫&ピンクがかった夕焼け」というのは、都会でしか見られない光景ではないかと思います。田舎の夕焼けは、「赤」か「橙」なんですよね。これは、街の明かりと関係しているのでしょうか?? 真相は不明ですが…。

 

なので、この時に撮影した映像が、今の私にとっては「都会を象徴する美しさ」(笑)に見えて、より一層美しく思えたのでした。

 

でも、この、「陽が沈む直前の空の色」というのは、本当に短い時間です。たぶん時間にして10分もないですよね? しかも、その10分の間にも、刻一刻と色合いが変わっていくものです。

 

実際、私が撮影した以下の映像も、前半の路面電車が通り過ぎる映像のあと、後半には車が行き交う映像をつなげていますが、そのかん、わずか2分程度しか違わないのに、暗さがだいぶ違って見えます(車の往来のほうが暗いです)。

 

映画の中で、このふたつを連続した映像としてつなげる場合、人間の生理的な感覚としては、ちょっと時間軸に差がありすぎるかな?と思います。隣り合わせにするには、(実際には2分程度の差しかないのに)時間が進みすぎているように感じてしまうかもしれません。

 

なので、オリジナルの色味のまま両者をつなぎ合わせるよりも、どちらかをどちらかに合わせる色補正を少しかけた方が、観客にとっては、「向原駅の夕暮れ:路面電車と車の往来」という一括り(ひとつの出来事・風景)として違和感なく受け取れるのではないかと思います。

 

「ドキュメンタリーは事実をありのまま…」と言っても、実際には、「ありのままに見せる」ための様々な工夫が、細部に施されていますよね(^^;)

 

そんなことを考えた、夕暮れと路面電車映像でした。動画(約41秒)は以下です。ぜひご覧ください♪

 

 

以上、本日の制作日誌でした(^-^)