お日様のちからで映像を作る!~電気代ゼロ円生活・フジイチカコさん~

先月、ホームページ経由で一通のメールを受け取りました。フジイチカコさんという方から、映像ワークショップに関する問い合わせでした。

 

メールの冒頭、「東京の団地で、電気代ゼロ円の生活をしています」と書かれてあって、すぐに(もしかして!)と思い当たりました。

 

以前、シビルの河野環さんから、「団地で、太陽光発電で暮らしている女性がいる」、「天気が悪い時は、自転車をこいで発電量を補っている」と聞いたことがあり、(そんなことが出来るの??)とびっくりした記憶があったからです。

 

フジイさんのメールには、「今の、電気代ゼロ円の生活を撮りたい」「身近なもので出来るエコアイデアの動画を、SNSで発信したい」「初心者向けの講座があれば参加したい」と書いてありました。

 

ちょうど昨年、シビルの映像ワークショップを終えたばかりだったので、しばらくシビルでの開催はなさそうですし、その他に現在いただいているワークショップの企画は、参加者が限定されるもの(その学校の学生さんのみとか)だったので、フジイさんの要望にちょうど合う講座は、残念ながら予定がありませんでした。

 

ただ、フジイさんの場合は、撮りたいものや目的がはっきりしているので、それなら個人レッスンの方が合うかもしれないと思いました。そこで、個人レッスンを提案し、フジイさんのご自宅にて、撮影と編集のワークショップを行うことになったのでした。

 

個人レッスンは、2月に3回行うことになりました。2月は晴れの日が多いので、太陽光発電という点では良さそうですが、1年で最も寒い時期でもあります。フジイさんからのメールには「暖房が少ないので、暖かい服装でお越しください」と書かれてあったので、分厚い防寒着を押し入れから引っ張り出しました。

 

まるでスキーにでも行くような格好😅

 

 

13時にフジイさんの最寄り駅で待ち合わせをし、ご自宅へ向かいました。お住まいは、ごく一般的な賃貸集合住宅です。

 

電気を自給する生活は、あの「ポツンと一軒家」にでも出てくるような、人里離れた山奥じゃないと難しいのでは?と思っていましたが、東京の、しかも団地でも出来るって、誰でも・どこでも出来そうで、なんだか希望が持てますね😀!

 

ご自宅に到着し、ワークショップの前に家の中を案内していただきました。まず、ベランダから。

 

ベランダに設置された太陽光パネル。

 

 

 

太陽光パネルは、布団のようにベランダに干す(吊るす)のだろうと思っていましたが、団地やマンションでは落下の危険性もあるため、平置きに設置。ホームセンターで購入した洗濯干しを、パネル置きとして使用しています。風で倒れないよう、足元にはブロックの重し。

 

 

太陽光だけで家庭の電力をまかなうなら、目一杯パネルをベランダに並べるのでは…と思っていましたが、ベランダを他のことにも使いたいので(家庭菜園のプランターやソーラークッカーなど)、これぐらいのパネルの数にしているそうです。

 

ベランダの家庭菜園。

 

 

次はおうちの中を…

 

こちらが、うわさの発電するエアロバイク!! バイクの足元にはバッテリーがつながれ、バイクをこげば左上の電球が光るという仕組み!!

 

 

天気の悪いとき、もしくは夜など、蓄えておいた電気がなくなったら、このバイクをこげば電気が生み出せるのです!!

 

…とはいえ、このバイクは、元々トレーニング用のエアロバイクなので負荷が強く、こぐのに力が要るとのこと。体力づくりにもなって一石二鳥と言えば、そうですが…😅!

 

 

フジイさんのおうちは、電気以外にも様々な工夫がされていました。

 

冬には、カーテンレールに分厚いキルトを吊り下げ、窓から熱が逃げていくのを防ぎます。キルトのほか、梱包に使うプチプチのシート(大判)も吊り下げ、二重にしてありました。実際、かなり断熱効果があるようで、スキー場並みの装備でやってきた私は、暑くて上着を脱ぐことに😅

 

 

火鉢と八王子産の炭。

 

 

こちらは、使い終わった天ぷら油とティッシュで出来る、即席ランタンです! どちらも、どこの家庭にもあるものですから、災害時にも役立ちそうです。

 

 

以下の写真、割りばしの隣に映っているのが、こより状にしたティッシュで、ランタンの芯として使えます。フジイさんは、私の目の前で器用にささっとこよりを作って見せてくれましたが、いざ自分でやってみると、こよりがほぐれてきてしまうのです。こういうのは、動画でやり方を見せるのが良いでしょうね🙂

 

 

寒い冬を電気ナシで乗り切る工夫が、家のあちこちに施され、ほとんど寒さを感じませんでしたが、フジイさんによれば、最近は夏の暑さのほうがよっぽど大変だそうです。フジイさんが電気代ゼロ円生活を始めたころに比べ、夏の暑さが年々過酷になってきている、と。それは私も感じます🥹

 

さて、ひと通りおうちの中を見せていただいた後は、映像ワークショップの初回として、「撮影」についてやりました。撮影に使うデジカメとiPadを見せてもらい、必要な設定をし、実際に様々な構図で撮影の練習をしました。

 

電源は、ベランダで作られた電気です!

 

 

自分のパソコンが、ベランダで作られた電力で動いているなんて感動!!😀

 

 

小1時間ほどレッスンをした後、休憩時間。ソーラーオーブンで作ったという、バナナとクルミのケーキをいただきました。ケーキの型として使っているのは、アウトドア用のメスティン(飯盒)。

 

 

大体1~2時間でケーキが焼けるのだそうです。なにかをやっている間に、放っておけばお日様が調理をしてくれる…。これって、むしろラクな調理法かもしれません。

 

 

頂いてみて、びっくり! 砂糖は一切使っていないというのに、とっても甘いのです!! フジイさんによれば、ソーラークッキングは素材の甘みが引き出されて、砂糖なしでも十分甘いのだそうです。ダイエットにもなりそうですね😀

 

 

夕方までワークショップをし、初回のレッスンを終えました。

 

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さて、レッスン2回目。前回のレッスンを基に、この日はカラのDVDディスクと三脚も持っていくことにしました。

 

 

フジイさんの電気代ゼロ円生活は、これまでたくさんのメディアで取り上げられてきました。国内のみならず、海外のメディアでも紹介されています。

 

フジイさんのパソコンの中には、メディアで紹介された時のデータや、フジイさん自身が撮影した写真・映像が入ったままで、バックアップはしていない状態だったので、DVDへの保存の仕方を一緒にやることにしました。

 

前回、フジイさんのパソコンを見せていただいた時、DVDスロットはあまり使われていないようだったので、一応、クリーニングディスクも持参しました。

 

 

DVDの再生が出来ないから寿命かな?と思った時、すぐにあきらめないで、レンズクリーニングを試してほしいです。これで回復するケースも結構あるのです😀

 

 

電気代ゼロ円の生活を記録するフジイさんの場合は、三脚は欠かせないアイテムだろうと思います。三脚にカメラを固定して、ソーラークッキングをする様子を撮る、洗濯機のかわりに「サラダスピナー」(!)を使って脱水する姿を撮るetc、三脚を使うことで、自分ひとりでも安定したきれいな映像を撮ることができます。

 

写真用と動画用の、2種類の雲台がついた三脚を、見本として持っていくことにしました。

 

 

13時すぎに、フジイさんのご自宅へ。レッスンの前に甘酒をいただきました。

 

 

甘酒をいただきながら、前回も思ったことですが、とにかくフジイさんのおうちの片付いていることに感心していました。なかなか、ひと部屋を丸ごとがらんとした状態にしておくって、ないですよね? 大抵は、テーブルや収納棚を置いたり、掃除機やテレビがあったりして、空間が埋まっていってしまいます。

 

 

フジイさんは、電気代ゼロ円の生活に向かっていく過程で、エアコンをやめ、冷蔵庫・テレビをやめ、掃除機はホウキとチリ取りに置き換え…と、暮らし方も変えていったので、家の中がこんなにすっきりしているのだろうと思います。

 

染織作家のフジイさんにとって、アイロンは必需品。こちらはなんと、炭やガスで使用できるアイロンなのだそうです!

 

 

 

本当に必要で、代わりがきかない電化製品は使うけれど、そうでないものは手放すor非電化のものに置き換える。自分の家の電気を考えることは、暮らし方そのものを見直すことにもなるのですね。

 

さて、この日のレッスンは、まずパソコンの中にある大事なデータを、DVDに焼いて保存するということから始めました。

 

 

DVDディスクを、長期保存する場合の注意点についてもお伝えしました。記録面が接着しないよう、紙封筒のケースではなく、記録面が少し浮いた状態で保管できるケースを使うこと。保管の際は、ディスクが劣化しないよう、直射日光の当たらない場所で保管することetc。

 

フジイさんのお家では、「反射」のためにディスクがあちこちに使われていますが、長期保存用のディスクはこんな風にむき出しでぶら下げてはダメですね!!

 

 

まずは優先度の高いデータからDVDに焼いていき、途中で小休憩。この日も快晴で、フジイさんはソーラークッキングをしていました。

 

ベランダに置いたソーラーオーブン。カバーの内側は反射材で、太陽光調理の際は、カバーを広げた状態にして光を集めます。

 

 

調理が終わればカバーを閉じます。カバーを閉じればコンパクトになるので、置き場所にも困らなそうです。

 

 

このソーラーオーブンは、フジイさんが購入した当時は25,000円ぐらいでしたが、現在は値上がりして4万円ぐらいだそうです。

 

 

ソーラーオーブンは、中の筒にメスティンやアルミホイルで包んだ食材を入れて調理します。

 

 

パンが焼けました!!

 

 

 

クルミのパン。もちろん美味しかったです😋

 

 

この日は、別のソーラークッキングのやり方も見せていただきました。こちらは、レジャーシートを使った、簡易なソーラークッカーです。

 

 

必要なのは、レジャーシートのほか、黒のメスティン、透明プラスチック容器、網台だけ。本格的なソーラーオーブンに比べ、初期費用がとても安く済みますね!

 

 

レジャーシートには、黒マジックでガイド線が描いてあり、誰でも簡単に、もっとも反射率の良い角度で組み立てて使えるよう、工夫してあります。

 

 

保温用のキャップとして、フジイさんはサラダスピナーのプラ容器を利用していますが、透明でキャップとして被せて使えるものなら、何でもOKです♪

 

 

さて、メスティンの中に入っているのは…?

 

 

なんとお魚です! ハーブソルトを加えただけという白身魚、しっとりしてとても美味しい!!

 

 

レジャーシートでのソーラークッキングは、低温&密閉した状態での調理となるので、パサつきがちな食材でも、しっとり美味しく出来上がるそうです。鳥のムネ肉もおススメだそう!

 

…ええと、これでは映像ワークショップというより、むしろ、ソーラークッキングのワークショップではないか😅…と思いつつも、こんな風に料理が出来てしまうのが面白くて、フジイさんに質問してばかりでした。

 

「電気代ゼロ円生活」と聞くと、相当な覚悟と強い意志を持った人しか出来ないような響きがありますが、実際には、身近で、部分的に取り入れることのできるアイデアが満載なのです。

 

この日の後半は、パソコンを使った編集作業のやり方を紹介し、フジイさんにも実際にスライドショー映像を作ってもらいました。

 

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さて、ワークショップの3回目です。前2回は快晴でしたが、この日はくもり。(こういう日はどれぐらいの発電量なんだろう?)と、これまでのワークショップでは考えたこともなかったようなことを思うようになりました。

 

13時ごろ、フジイさんのお家に到着。くもりの日は、やはり発電量は少ないそうです。

 

…とはいえ、パソコン2台とiPadを立ち上げ、問題なくワークショップが進行!

 

 

前日に作ったという、キャロブ豆のケーキをいただきました。

 

 

この日は、企画書を作り、それに基づいて撮影・編集する…ということをやってみることにしました。

 

企画書のひな型をお渡しし、作りたい映像の企画書を10分間で書き上げてもらいます。

 

 

かわいいニワトリのタイマーは、電池ではなくネジ式!

 

 

ちなみに、ダイニングにある柱時計もネジ式。3週間に1度程度ネジを巻けば、電池は不要!

 

 

電気代ゼロ=電力会社との契約解除をしたフジイさんのお家では、これらのスイッチを押しても反応しません。

 

 

フジイさんの企画書が完成しました! 作品のテーマは「11年前に切られた電力メータ」、作品タイトルは「電気代0円生活は電力メータから始まった」!!

 

 

企画書を基に、今度は撮影を行います。iPadを三脚に取り付けて撮影。

 

 

作品のテーマに「11年前に切られた電力メータ」とある通り、フジイさんのお家の電力メーターは、「切られて」いました。

 

 

フジイさんは、2011年の東日本大震災や、直後の計画停電を機に、暮らしで使う電気について考えるようになりました。まず最初は、電気の契約アンペアを30Aから15Aに下げました。アンペアを下げただけで電気代が安くなったことに面白さを感じ、そのうち、使わない電化製品のコンセントを抜いたり、キャンプ用に買っておいたソーラー充電式のLEDランタンを日常で使うようになったり…と、少ない電力で暮らす生活の魅力にはまっていきました。

 

そして1カ月の電気代がいよいよ800円まで下がったとき、(ソーラー発電で暮らせるのではないか? ならばやってみよう!)と決心し、2012年9月、ついに東京電力との契約を解除し、電気メーターの配線が切られ、電気代ゼロ円の生活が始まったのでした。

 

この電気メーターは、まさに、フジイさんの電気代ゼロ円生活の”象徴”ともいえるものなのです。

 

 

ちなみに、現在の電気メーターは「スマートメーター」に置き換わっています。フジイさんのお隣の家は、スマートメーターが設置されていました。

 

 

スマートメーター。

 

 

フジイさんの家には電気が通っていないので、外の呼び鈴は使えません。細かいことですが、こういうところにも影響が出るのですね。

 

 

iPadで撮影をした後は、デジカメでも同じように撮影をしてみます。iPadは画質良く撮影できますが、微妙な大きさで持ちづらいですし、意外に重さもあります。どちらで撮影するのが良いかは、悩ましいところ…。

 

 

作品用の撮影を終えた後、団地の集会所に移動しました。今回は、天気が悪い時に備えて、集会所も予約しておいていただいたのです。

 

集会所で約2時間、iPadでiMovieを使って編集をやってみました。これまた、パソコンでの編集が良いのか、iPadで編集するのが良いのか、悩むところです。短い、単発の映像はiPad+iMovieで、長編作品はパソコン+Shotcutで…とかが良いのかなぁ…??

 

 

iPadでiMovie…は簡単そうに見えて、実際にやってみるとなかなか曲者で、この日、作品を仕上げるところまでたどり着きませんでした(すみません💦)。

 

18時過ぎに集会所を出ると、あたりはもうすっかり暗くなっていました。パソコン類を片付けて、フジイさんのお家に戻りました。

 

前2回は夕方までだったので、真っ暗なフジイ家は、私は初めてでした。玄関を開けて、真っ暗な中、フジイさんがLEDランタンを点灯します。

 

 

ガス式ストーブは、熱源だけでなく、光源にもなります。

 

 

キッチンにLEDランタンを吊るすと、だいぶ部屋の中が明るくなりました😀

 

 

目が慣れてくると、部屋の中の様子が分かります。こうやって写真で見ると、屋外の方が明るいですね。

 

 

「時間があれば甘酒でも…」というお言葉に甘え、甘酒をいただきました。

 

テーブルの上に、LEDライトがふたつ。ライトに照らされた甘酒は、まるで舞台でスポットライトを浴びているかのよう!

 

 

 

この暗さがなんとも心地よく、なおかつ美しい光景だったので、(太陽光発電で暮らす良さは、この夜の暗さにこそあるのでは?)と思ったほどでした。

 

フジイさんは、夜、ランプの明かりで本を読みながらビールを飲むのが、とても幸せな時間だと言っていました。たしかに贅沢な時間です!!

 

フジイチカコさん。

 

 

 

三脚にカメラを固定して、夜のお茶会の様子を撮影😀

 

 

 

とりあえず、予定していた3回のワークショップを終えました。編集をどれでやるかという課題は残っていますが、まずは、それぞれの季節の電気代ゼロ円生活を撮っておく、編集については追って考える、ということになりました。

 

さて、フジイさんとの映像ワークショップを通じて、太陽光発電のパワーと敷居の低さを知った私ですが、翻って、我が家の太陽光発電はどうなっているのか調べました。

 

なんと…

 

太陽光で動いているのは、この電卓だけ…💦💦💦

 

 

なんとも情けない状況…😅😅😅!

 

 

まずは、我が家のソーラー率を上げるところから始めなくてはですね😅!

 

最後に、フジイさんのSNSや書籍についてご紹介します。日々の暮らしや節電の工夫は、フジイさんのX(旧ツイッター)ブログでも見ることができます。

 

2017年に出版されたフジイさんの書籍、「ソーラー女子は電気代0円で生活してます!」(KADOKAWA)では、具体的にどんな太陽光パネルやバッテリーを使い、用途に応じて使い分けたりしているのか、電気を自給する上で欠かせない「ボルト/アンペア/ワット」の知識や、「交流/直流」の違いなどについても、漫画で分かりやすく解説されています。

 

 

染織作家であるフジイさんの、「染織二人展」のご案内も頂きました。(2024年3月29日~4月3日11:00~17:00@カフェスロー国分寺)。

 

 

 

3回のワークショップで扱いきれなかった部分は、今後追加でフォローできればと思います。フジイさんが、自分の家で作った電気で、これから映像作品を作っていかれるのがとても楽しみです!!

 

以上、「お日様のちからで映像を作る!~電気代ゼロ円生活・フジイチカコさん~」でした😀!