【上映会レポート】非公認・非推薦・非後援映画を目指す!(2018/04/14『インド日記』@神奈川県高座郡寒川町)

先週末は、神奈川県高座郡寒川町にて、『インド日記』の上映と講演をさせていただきました。主催は、「住みよい町・さむかわにする会」(以下、「サンエスの会」)です。

 

会場の寒川総合体育館。

 

 

上映会場の多目的室。

 

 

(わ、広い…)と私は感じるのですが、主催の「サンエスの会」理事長・鈴木さんによると、これまではもっと大きな会場で上映をしていたそうです。しかし、大きな会場では、ただ映画を観て帰るだけになってしまう、映画を観た後にディスカッションをして、それを普段の暮らしや地域活動に生かしてほしい、と考え、今回から会場の規模を小さくしたとのこと。

 

案内チラシ。

 

 

会のメンバーの方たちが、上映の準備をされていました。司会のあいさつ文をどう書くか、集まって話しているところです(^^)

 

 

なんと、衆議院議員から電報が! 上映会に電報が届くというのは、私の映画史上(笑)、前例のないことです。

 

 

 

受付の様子(撮影:坂本地人さん。記事中、坂本さんご提供の写真を何枚か使わせていただいています。ありがとうございます!)。

 

 

開始時刻になりました。理事長鈴木さんからのあいさつ。

 

 

 

来賓席には、寒川町長と、寒川町教育委員会の方。

 

 

寒川町長のあいさつ。

 

 

寒川町教育委員会の方のあいさつ。今回の上映会は、教育委員会が「後援」となっています。

 

 

 

国会議員からの電報も読み上げられました。

 

 

この、主催者挨拶⇒町長挨拶⇒教育委員会挨拶⇒国会議員からの電報読み上げ…という一連の流れを、会場後方から眺めていて、まるで小学校の入学式にでも参列しているかのような気持ちになりました。なぜなら、「主催者挨拶」以外は、普段の私の上映会ではありえないことだからです。

 

県や市、教育委員会が主催・後援する「映画祭」には、自分の作品を上映&出席したことはあります。「映画祭」全体の主催・後援というのは、かならずしも、映画祭の中で上映される各作品・全作品に対して、お墨付き(?)を与えているわけではありません。中には、行政や教育制度を批判するような作品も含まれていますし、過激な性描写がある映画も上映されます。それら、「作品単体」ではきっと行政(ましてや教育委員会)は、主催・後援しないでしょうが、「映画祭」という文化的・教育的活動は「全体として」支援するということなのだと思います。

 

「サンエスの会」では、これまでの上映会もすべて、教育委員会が後援をしているとのことでした。それはきっと、会のこれまでの活動が行政にも評価され、一定の信頼関係が築かれているからなのでしょう。また、「寒川町」という町のサイズによるところもあるかもしれません。

 

とはいえ、あまりにも過激な映画だったら、やはり行政は(このご時世ではますます)、後援をしないでしょう。最悪の場合は、公共施設を上映会場として使わせないということもあり得ます。

 

『インド日記』が完成して1年半ほど経つのですが、このかん、この映画に対する問い合わせに関して、(ほかの映画と違う)と感じることが度々ありました。とある行政機関から、以前は「早川さんの映画は上映したいけど、うちでは無理」と言われていたのに、「この作品なら上映できそう」と言われたりするのです。

 

なぜなのか?と考えて、私は以下の推測にたどり着きました。

 

・舞台が「インド」なので、日本国内の問題ではない。
(『ブライアンと仲間たち』はイギリスが舞台だが、反戦・平和活動家というのは、「政治色がある」とされて取り上げにくい)

 

・途上国の女性を取り上げている。
(貧しい国の現状を知り、そこで暮らす女性たちの大変さに思いを寄せる…というのは、分かりやすい「教育的」映画である)

 

・「マララさん」的な安心感のある映画である。
(ノーベル平和賞を受賞した、パキスタンのマララ・ユスフザイさんは、受賞時のスピーチで、「Education first.」(教育を第一に)と言った。『インド日記』に登場する女性たちも、同様のトーンで教育の必要性を訴えている。女性の地位向上のためには、教育が必要、社会を変えて行こう…という、分かりやすいストレートなメッセージである)

 

「女性」であるだけで、学校にも行かせてもらえない、読み書きも出来ない、10歳で結婚することも珍しくない…という、彼女たちが置かれている状況からすれば、そのように訴えるのは、もちろん当たり前のことです。

 

しかし、この日本で暮らす私たちにとっては、「学校」や「教育」は、残念ながら(近年は特に)無批判に有難がれるものではなくなっている…と感じるのです。

 

もちろん、読み書きができるようになったり、様々な教科を勉強できることは、とても良いことです。しかし、「教育」として私たちに与えられるものの中には、政府や大人の思惑が反映された歴史の教科書や、道徳の教科化、果ては教育の軍事協力など、「国にとって都合の良い人材」を育てるかのような「教育」も、セットになって与えられてしまうのです(> <)。

 

マララさんが言うように、教育が大切なのは疑う余地がありませんが、(日本では特に)その教育の「中身」に気をつけないと(誰が、どんな目的で「教育」しようとしているのか)、大変な世の中になってしまう…、そんな風に思うのです。

 

以前、インド大使館で行われた州知事の講演会に参加したことがあるのですが、その知事は女性で、お話の内容はまんまマララさん的でした。質疑応答の際、私は、「日本の教育では、国や政治の思惑が入り込み、国にとって都合の良い人材を育てるというような危険性もある。インドはどうか?」と質問しました。

 

私の質問の仕方も不十分だったのかもしれませんが、知事は「教育は良いものに決まっている」「なぜ教育が危険なのか」…と、私の質問の意図は伝わりませんでした。

 

難しいな…!

 

ちょっと話がそれましたが、私は教育について、「気をつけながら教育を受ける」べきだという考えです。しかし、『インド日記』の中では、取材対象の人たちがマララさん的でしたし、取材期間も非常に短かったので、「行政も安心して見られる」映画(!)になっているのです。

 

それはそれでちょっと微妙でもありますが、でも、この『インド日記』を通じて、これまでは出会えなかったような方々とも知り合え、そこからまた新たな世界が広がっているので、それもありかな…とも思います。『インド日記』を入り口に、私のほかの映画も観ていただけたらいいな!と(^^)。

 

私は、教育委員会の来賓あいさつを聞きながら、現在編集中の映画『革命前夜』について、思いを巡らせていました。どんな映画になるのかまだ未知ですが、確実に言えることは、この作品は行政や教育委員会が「後援」するような映画には、絶対(×100)ならないということ…!!! いや、もしかしたら、これまで私のほかの映画を上映してくださったような方々(『ブライアンと仲間たち』や『さようならUR』等)さえも、上映を見合わせるかしら…???

 

全く想像できません…(^^;)。

 

でも、映画を作るときには、「映画」として最上のものを目指すべきで、手持ちの素材を吟味し、それを一番生かせるような編集ができたか、自分の全力を出し切ったか、エンターテイメントとして成立しているか等の視点だけで考えるべきで、「上映がしやすい」とか「こういう層にPRできる」とか「行政の後援がもらえる」とか、そんなスケベな下心を持って編集してはならない!!と思います。ろくな作品になりませんよね?

 

なので、究極にはもう、「非公認」、「非推薦」、「非後援」の作品を目指せばよいのです!

 

特に、行政や教育委員会のお墨付きなんて、くそくらえ!

 

このような心持ちで、日々、新作の編集作業に取り組む所存です(^^)

 

(また)話がそれたので、上映会のレポートに戻ります。

 

挨拶が終わり、いよいよ映画の上映が始まりました。

 

 

上映のあとは、15分程度の休憩時間がありました。会場の後方で私のDVDも販売し、購入してくださった方とお話が出来ました。

 

この日の上映会にいらした方々は、すべて地元の人たちだろうと思い込んでいたのですが、なんと、その方は東京から観に来てくださったそうです。

 

しかも! 私の、日々の畑仕事&家庭菜園に関するツイッターで私のことを知り、映画にも興味を持って観に来てくださったとのこと!! その方自身も、畑を借りて家庭菜園をされていて、私のなんちゃって家庭菜園の様子を、興味深く読んでいるのだそうです。

 

私の知る限り、「農作業」から「私」の存在を知り、「映画」まで観に来てくださった方は初めてです。こんなことがあるんだ~~~と、驚きでした。だって私は、畑仕事はまだ2年しかやっていない初心者ですよ?! でも、生来のヲタク気質でマニアックに畑仕事にのめり込み、それをまたヲタクちっくにくわしく書いているのが、特定の層に受けているのかしら?

 

私は、映画も畑も、全く同じ姿勢と熱量で取り組んでいるので、こんな風に見に来てくださる方がいて、とてもうれしいです。しかもこんな遠くまで!

 

休憩時間のあとは、講演と質疑応答をさせていただきました。

 

 

講演では、自己紹介的な話から、これまでの作品、そして『インド日記』にまつわるエピソードなどを中心にお話ししました。講演の後半では、現在の私の片田舎暮らし、畑仕事、空き家問題などなど、寒川町の現状とも絡めながら、これからどんな風に個人の生き方や地域のコミュニティが向かっていけるのか、限定的ではありますが私個人の日々の実践から、思うところをお話しました。

 

質疑応答では、「現在の暮らし方を映画にする予定はあるか」、「海外で映画を作る予定はあるか」、「インドの女性の様子は良く分かったが、男性はどうなのか?」、「次回作はどんな内容か」、「映画制作のモチベーションはなにか」など、沢山の質問をいただきました。小学生の女の子も質問してくれて、とてもうれしかったです(^^)

 

無事、上映と講演が終わり、寒川町のインド料理屋で打ち上げを。元・お寿司屋さんなので、外装も内装もお寿司屋さんでしたが、インド料理は本格的でした(^^)

 

 

 

 

その晩は、「サンエスの会」理事長の鈴木さん夫妻のご自宅に泊めていただきました。

 

翌朝は、鈴木さんの畑を見学。最近はもう、「畑の見学ほど面白いものはない」私です(^^)♪

 

 

旬のアスパラガスを収穫します。

 

 

以前ブログに書きましたが(その時の記事はこちら)、私は今年初めてアスパラの苗を植えたので、今年は収穫をすることが出来ません。

 

なので、アスパラがどのように成長し、収穫できるものなのか知らなかったのですが、こんな風に育つのですね~。

 

 

 

私は1苗しか植えていませんが、そうすると、毎年5本ぐらい収穫して終わり…みたいな感じになってしまうのでしょうか???

 

 

あ、こちらはもう少し本数が多いようです。

 

 

でも、いずれにせよ、アスパラの苗は何株も植えたほうが良さそうですね!

 

トマトの苗。

 

 

そら豆もいいですねぇ! 育ててみたい野菜の一つです(^^)

 

 

ニンニク。

 

 

さやえんどう(?たぶん)の収穫。

 

 

鈴木さんの畑では、今年初めて、ブドウ棚を作ったそうです。楽しみですね!

 

 

畑を見学した後は、鈴木さんの中学時代の恩師・奥山和子さんのお見舞いに行きました。

 

 

なんと、現在99才! お茶の水女子大を卒業し、教師となり、ご主人の植物分類学者・奥山春季さんとともに、植物研究家・植物写真家として、数々の本を出版されたそうです。

 

戦前、さらに女性で大学に進む人というのは、大抵、超がつくほどのお金持ちでないと無理ですが、奥山さんの場合は、苦学して大学に進学したそうです。当時を、「猛勉した」と振り返るぐらいですから、相当な苦労と努力だったのだろうな…と想像しました。

 

鈴木さんが私を「映画監督です」と紹介すると、奥山さんは即座にこう言いました。

 

「あなた、自分の敵は自分なのよ!」

 

「大抵の人は、自分に負けるの」

 

「自分に負けたら、何も成し遂げられないわよ」

 

「私は、自分に負けないように、アザだらけになるまで自分を殴って勉強を続けたのよ」

 

「自分に負けちゃだめ」

 

…絶句…

 

それ、『レッド』(山本直樹)の世界ですよ!?

 

(なんだか、すごい人に喝を入れていただいちゃったなぁ…)と思いつつ、「自分の敵は自分」を心に刻んで、鈴木さんのお宅に戻りました。

 

採れたてをいただくという贅沢!

 

 

 

とても美味しいお昼ごはんでした♪

 

 

2日間大変お世話になって、夕方、自宅に戻りました。

 

上映会を主催してくださった「住みよい町・さむかわにする会」の皆さま、そしてご来場くださった方々、どうもありがとうございました!