女のしんぶん 2017年10月10日 監督インタビュー

2017年10月10日、女のしんぶんに監督のインタビュー記事が掲載されました。(写真と文:片桐美佐子さん)


インド日記 〜ガジュマルの木の女たち〜

女のしんぶん

記事本文 「撮ることは、魂のぶつかりあい」

アジア女性映画祭で初めて訪れたインドをスケッチするように映像に納めた最新作『インド日記』。そこには早川由美子さんならではの出会いと視点があり、自分自身で人生を切り開いていこうとするインド女性の逞しさが浮かび上がる。

始終笑顔を絶やさず、穏やかに話す早川さん、ドキュメンタリー作家としての情熱はどこから湧くのだろう? (聞き手・片桐美佐子)

▶映像の力を知りイギリスへ

学校を出て10年間、公務員や会社勤めをしながら、趣味でライターのまねごとをしていました。公園などのベンチになぜ中仕切りの手すりがあるんだろうと調査し、ホームレスのベッドにさせないためではないかと「オーマイニュース」というサイトに記事を書いたら、大炎上したんです。

それを「ニュース23」で取り上げてくれ、映像が伝える力に衝撃を受けました。既に会社を辞めてイギリスにあるジャーナリズムの専門学校に行くことを決めていたので、急きょ5万円のビデオカメラを買って持っていきました。10年前のことです。

▶平和活動家との出会い

ロンドンの国会、ビッグベン前の小さな広場にヒッピーコミューンのようなテント村で生活している人を見かけました。ホームレスかと思いましたが、イギリスがアフガニスタンとイラクに出兵する事に反対し、2001年から抗議と座りこみを続けている平和活動家、ブライアン・ホウでした。

最初は相手にしてくれませんでしたが、やがて受け入れてくれるように。技術も経験もない私は「ドキュメンタリーは通い続けることだな」と悟りました。それが最初の作品『ブライアンと仲間たち パーラメント・スクエアSW1』(2009年)です。国内外で多数回、上映してもらいました。

▶インドの女性たちに会いに行く

前作『踊る善福寺』が、インド・デリーで開かれた「アジア女性映画祭」上映作品に選ばれ、出国する前にインド大使館で大使(女性)に会いました。当時、レイプ事件が大きなニュースでした。「性暴力事件だけではない、インドの女性たちの実際を見て欲しい」と言われたんです。

『インドを変える女性たち』という本に「SEWA(Self Employed Women's Association)」が紹介されていました。露天商など貧しい自営業の女性たちの組合です。

200万人の組合員が少しずつ資金を出し、自前の銀行を持ち、文字学習やビデオ教室まで行なっている。援助を受けているわけではない。なぜこのような活動が大規模で行なえるのか知りたいと、彼女たちを訪ねました。

▶スタンダードでないものを撮る

現在は最新作『革命前夜』の編集中です。東京・大塚にあるシェアハウス「りべるたん」が舞台。左右問わず政治に関心を持つ若者、ひきこもり経験者、学生運動家から宗教家に転じた人など、ある意味、社会のスタンダードから外れた人が集まっています。

常識や正攻法ではこの社会はいつまでも変わらない。むしろ「非常識」な人たちが世の中を変えていくのではないか? イギリス国会前で10年間座り込みを続けたブライアンを撮り始めてから今日まで、私の関心は常に、最前線を行く「スタンダードではない人」にあるのだと思います。

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社会をより良くしたい、おかしなことには声をあげて抗議する―そんな人々をドキュメンタリーの題材に選ぶ早川さん自身も、平和活動家である。

▶『インド日記~ガジュマルの木の女たち』

労働者のデモ、農民の集会、ホームレスのシェルター、そしてSEWA(自営業の女性たちの組合)を取材し「私たちは貧しい、だが大勢いる」―その活動を紹介。カメラを持ったことのない女性がビデオ撮影を学び、自分たちの置かれたアンフェアな状況を撮影し、政府交渉などに役立て生活改善に繋げる活動に、勇気をもらえる作品だ。

■ DVD 購入・上映日程はプチ・アドベンチャー・フィルムズ